日向坂46の「始まりの曲」である“日向坂”は今こんなにも大きな曲になった

日向坂46の未発表曲“日向坂”。12月11日放送のフジテレビ系『2019 FNS歌謡祭』で地上波初披露されて大きな反響があったこの曲は、ライブではまだ一度しか歌われておらず、CDにも収録されていない。しかしメンバーにとってもファンにとっても、ひときわ思い出深い特別な曲だ。

「先を歩く誰か」の背中をずっと追い続けていたけれど、ここからは「自分の道」を行く――そんな強い決心が綴られた歌詞は、欅坂46のアンダーグループ「けやき坂46(ひらがなけやき)」として活動していた頃の彼女たちの姿を思い起こさせる。その道のりは平坦なものではなく、いつだって漢字欅という「大きな木」への憧れや、「日陰」の存在であるゆえの悔しさと共にあった。そういった気持ちを抱えながらも絶対に折れず、むしろ逆境を跳ね返すくらいのポジティブなパワーを持って笑顔を絶やさなかったことが、彼女たちの代名詞「ハッピーオーラ」を確立させた。そして今年2月に「けやき坂46」は「日向坂46」へ改名、グループからの独立を果たしたのである。

そんな彼女たちのストーリーがそのまま歌になった“日向坂”は、今年3月に横浜アリーナにて行われた「⽇向坂46 デビューカウントダウンライブ!!」で初披露された。この日はけやき坂46としての「ラストライブ」、日向坂46としての「ファーストライブ」という2部構成になっていて、寂しさと期待が入り混じる感覚があった。正直、独立が発表されて1ヶ月も経っていなかったこの時は、まだメンバーも混乱していたし、それぞれがいろんな思いを抱えていたように思う。しかし本編の最後に歌われたこの曲が、彼女たちの背中を強く押した。そして日向坂46の「始まりの曲」として、メンバーとファンの間でひっそりと大切にされてきたのだ。

日向坂46にとって、2019年はまさに大飛躍の1年だったと言える。大規模な会場でのライブが続き、3枚のシングルをリリース、メディア露出や歌番組への出演も格段に増え、大晦日には『第70回NHK紅白歌合戦』初出場を果たす。少しでも目を離すと追いつけなくなってしまいそうなほどのスピードと勢いで坂を駆けあがり、すでに彼女たちは日向坂46のカラーを揺るがないものにした。だからこそ“日向坂”は、ライブで毎回やるような曲ではないのかもしれない。でも彼女たちのこれまでの歩みが、グループのアイデンティティを形成した重要な要素であるのには変わりなく、それを踏まえて聴くことでリアリティが生まれる曲も多い。例えば、いつか憧れの東京ドームに立つという夢が描かれた“約束の卵”。先日、ついに来年の12月に東京ドーム単独公演を行うことが発表されたが、この曲はひらがなけやき時代からライブで歌われてきた。今の日向坂46の勢いだと東京ドーム公演も想像できてしまうけれど、ひらがなけやきの頃はまだまだ夢物語に近かったのだ。あの広い会場で“約束の卵”を歌う彼女たちの姿を思い浮かべると、今からでも胸が熱くなってしまう。

そんなふうに彼女たちの歩みを知ると、きっともっと日向坂46が好きになる。だから『FNS歌謡祭』で“日向坂”は披露された。同時に、どんなに大きくなっても「ひらがなで学んだこと」を忘れないという決意表明でもあっただろう。マイクを手に持ち、まっすぐ前を見て歌う彼女たちの姿は、「デビューカウントダウンライブ」の時よりもずっと成長していて、感慨深い気持ちにならずにはいられなかった。きっと“日向坂”はこれからも、大切なシーンで歌われ続けていく。(渡邉満理奈)

“日向坂”が披露された「⽇向坂46 デビューカウントダウンライブ!!」ライブレポートはこちら
日向坂46/横浜アリーナ
●セットリスト 00. Overture 01. ひらがなけやき 02. 誰よりも高く跳べ! 03. 僕たちは付き合っている 04. 永遠の白線 05. それでも歩いてる 06. おいでシャンプー 07. イマニミテイロ 08. ひらがなで恋したい 09. 半分の記憶 …
日向坂46/横浜アリーナ - All photo by 上山陽介
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